K-SNAPP

『シャン・チー』から『プラダを着た悪魔2』まで――人種差別的設定で物議を醸した作品3選

ハリウッドにおけるアジア差別…“度を越した”東洋人の消費のされ方

プラダを着た悪魔2, 東洋人, 侮蔑, 差別, ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド, ブルース・リー, 李小龍, リコリス・ピザ, アクセント, 嘲笑, マーベル, シャン・チー/テン・リングスの伝説, シャン・チー
写真: 映画『プラダを着た悪魔2』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
プラダを着た悪魔2, 東洋人, 侮蔑, 差別, ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド, ブルース・リー, 李小龍, リコリス・ピザ, アクセント, 嘲笑, マーベル, シャン・チー/テン・リングスの伝説, シャン・チー
写真: 映画『プラダを着た悪魔2』

20年ぶりの続編として戻ってきた映画 プラダを着た悪魔2が、中国系キャラクターの人種差別的な設定をめぐり、アジア各地で強いボイコットの動きに直面していると報じられている。作中に登場する中国系キャラクター、チン・ジョウ(秦舟)の名前が、西洋圏で中国人を侮蔑する表現「Ching Chong(チンチョン)」を連想させるとの指摘が上がり、古臭いスタイリングや設定も問題視されたという。

21世紀も四半世紀を過ぎたが、西洋映画における東洋人への蔑視は依然として残っているとされる。露骨なイエロー・フェイス(yellow face)こそ目立たなくなったものの、東洋人が嘲笑の対象になったり、白人中心の物語を引き立てる消耗品として扱われたりする例は少なくないとの声もある。ここ数年、映画界を賑わせた話題作の中にも、こうした批判を免れなかった作品があったとして、ハリウッドの差別的視線が露呈して議論を呼んだいくつかの例を振り返る。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

プラダを着た悪魔2, 東洋人, 侮蔑, 差別, ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド, ブルース・リー, 李小龍, リコリス・ピザ, アクセント, 嘲笑, マーベル, シャン・チー/テン・リングスの伝説, シャン・チー
写真: 映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

キル・ビルシリーズなどで知られるクエンティン・タランティーノ監督が2019年に公開した映画 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドは、1960年代ハリウッドへのオマージュとして絶賛を浴びた一方で、アジア系の観客には深い傷を残したと伝えられた。作中で、アジア武術の伝説であるブルース・リー(劇中ではイーソーロン表記)を、傲慢で口先だけの法螺吹きとして描いたことが理由だ。映画の中でブルース・リーは「モハメド・アリにも勝てる」と豪語し、白人スタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)との対決で車に叩きつけられる屈辱的な場面が描かれる。

リーの娘シャノン・リーは「父は白人中心のハリウッドで生き残るため、白人俳優の3倍は努力しなければならなかった」と明かし、「映画は父を傲慢な白人たちの笑いものにした」と強く非難したという。リーと親交の深かった伝説的バスケットボール選手、カリーム・アブドゥル=ジャバーもまた、本作を「人種差別的で怠惰な演出」と批判したとされる。それでもタランティーノは「ブルース・リーは実際にも尊大だった」と述べ、演出を曲げなかったことで、アジア系ヒーローの遺産を白人キャラクターのマッチョ性を誇示する道具に貶めたとの厳しい批判は避けられなかった。

リコリス・ピザ

プラダを着た悪魔2, 東洋人, 侮蔑, 差別, ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド, ブルース・リー, 李小龍, リコリス・ピザ, アクセント, 嘲笑, マーベル, シャン・チー/テン・リングスの伝説, シャン・チー
写真: 映画『リコリス・ピザ』

2022年の英国アカデミー賞で脚本賞を受賞したポール・トーマス・アンダーソン監督作 リコリス・ピザは、公開直後にアジア系アメリカ人コミュニティの強い反発に直面したと報じられた。作中の白人レストラン経営者ジェリー・フリック(ジョン・マイケル・ヒギンズ)が、日本人の妻たちに接する態度が問題視されたためだ。英語を理解しない最初の日本人の妻に対し、まるで自分が日本人になったかのように、滑稽な「モック・アジアン・アクセント(Mock Asian Accent)」で英語を話して嘲る。のちに迎えた二人目の日本人の妻にも、同様の人種差別的な発音を繰り返す。

米国のアジア系メディア行動ネットワーク(MANAA)は直ちに声明を発表し、「アジア人への無差別なヘイトクライムが急増する中で、アジア人を滑稽な異邦人として扱う場面を、単なるユーモアとして消費した」として、映画賞での表彰ボイコットを呼びかけた。波紋が広がると、監督は「1970年代の世相を誠実に描いただけだ」と釈明したが、白人観客の爆笑を誘うためにアジア女性の言語を歪め、対象化した点で、ハリウッドに潜む人種差別の典型例だと烙印を押された。

◆ シャン・チー/テン・リングスの伝説

プラダを着た悪魔2, 東洋人, 侮蔑, 差別, ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド, ブルース・リー, 李小龍, リコリス・ピザ, アクセント, 嘲笑, マーベル, シャン・チー/テン・リングスの伝説, シャン・チー
写真: 映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

マーベル・スタジオで初めてアジア人スーパーヒーローを単独主演に据えた映画 シャン・チー/テン・リングスの伝説は、逆説的にハリウッドが東洋人をいかに差別してきたかを示す苦いマイルストーンになったとの見方がある。映画自体はアジア文化への敬意を払おうと努めたものの、原作コミックが抱える「原罪」が足を引っ張った。原作でシャン・チーの父は、西洋が生み出した最悪の東洋人悪役像であるフー・マンチュー(Fu Manchu)だったためだ。フー・マンチューは、細い目や長い口ひげ、狡猾で残忍な性格で西洋を破壊しようとする「黄禍」を象徴する、人種差別的キャラクターの典型とされる。

制作陣はこの致命的なレッテルを外すため、映画では父親像をウェンウー(トニー・レオン)という魅力的で立体的な新キャラクターへと全面的に改変せざるを得なかった。しかし、西洋メディアが東洋人を悪意的に消費してきた痛ましい歴史を記憶する中国の観客は、設定変更にもかかわらず、作品のルーツがアジア人嫌悪に由来する事実に強い拒否感を示したとされる。結果として本作は中国本土で一度も劇場公開されないまま上映禁止となり、過去の差別的創作がどれほど深い傷跡として残り得るかを浮き彫りにした。